クラリスロマイシンの併用禁忌・注意や飲み合わせについて確認
クラリスロマイシンに限らず、医薬品には併用禁忌・注意薬が存在します。
ここでは、クラリスロマイシンとの併用に注意したほうがいい医薬品を解説していきます。
目次
クラリスロマイシンの併用禁忌
クラリスロマイシンの特徴の一つに、「CYP3A4を阻害する」というものがあります。「CYP3A4」とは人間の対内にある代謝酵素の1つで、さまざまな医薬品の代謝に使われるのですが、クラリスロマイシンを服用するとこの代謝酵素が阻害されて(減って)しまい、その他の医薬品の代謝が遅くなることがあるのです。
カンタンに言うと、「クラリスロマイシンを服用すると、一部の医薬品がうまく代謝できなくなる」ということです。代謝しにくくなるということは、その医薬品はずっと体内に留まるということですから、予想よりも強く効きすぎるといった状態になります。
成分名(薬品名) |
利用される症状 |
懸念される事態 |
---|---|---|
ピモジド(オーラップ) |
統合失調症 |
QT延長や不整脈などが起こる可能性がある。 |
エルゴタミン酒石酸塩(エルゴタミン、クリアミン、ジヒデルゴット) |
片頭痛 |
血管攣縮等の重篤な副作用をおこすおそれがある。 |
タダラフィル(シアリス) |
ED |
タダラフィルの効果が増強される。 |
アスナブレピル(スンベプラ) |
C型肝炎 |
肝臓関連の副作用が増強される。 |
バニプレビル(バニヘップ) |
C型肝炎 |
悪心や嘔吐、下痢などの副作用が増強される。 |
スボレキサント(ベルソムラ) |
不眠症 |
スボレキサントの効果が著しく増強される。 |
↑の医薬品はいずれも「CYP3A4」で代謝される医薬品であり、クラリスロマイシンと同時に服用すると代謝が遅くなってさまざまな症状が懸念されるようになります。そのため、併用禁忌となっており、同時服用は認められていません。
タダラフィル(シアリス)やスボレキサント(ベルソムラ)は利用者も多い医薬品なので、特に注意が必要です。クラリスロマイシンを服用する際は控えるか、別の医薬品に変えるようにしましょう。
クラリスロマイシンの併用注意
クラリスロマイシンの併用禁忌はすでに解説した通りです。そして、「禁忌」とまではいかないですが、慎重に併用すべき「併用注意」の医薬品もあるので紹介します。
成分名(薬品名) |
利用される症状 |
懸念される事態 |
---|---|---|
スルホニル尿素(グリベンクラミド) |
糖尿病 |
低血糖状態になることがある。 |
テオフィリン(テオドール)、 アミノフィリン水和物(ネオフィリン) |
気管支ぜんそく、気管支炎、COPDなど |
作用が増強される。 |
コルヒチン |
痛風 |
肝機能障害や筋肉痛、腹痛などが見られる。 |
ベンゾジアゼピン系薬剤(アモバン、ルネスタ、ハルシオンなど) |
不眠症 |
作用が増強する可能性がある。 |
シルデナフィル(バイアグラ) |
ED |
作用が増強する可能性がある。 |
ワルファリン(ワーファリン) |
血栓塞栓症 |
作用が増強する可能性がある。 |
↑の一覧は、併用注意薬の中でも利用される機会の多いもの、注意すべきものを選別したものです。(その他の併用注意についてはクラリスロマイシン添付文書をご覧ください)
中でも特に注意したいのが、「睡眠薬」と、「ED治療薬」です。この2つは他の医師に服用していることを伝えにくく、黙っているうちにうっかりクラリスロマイシンと併用してしまいがちです。
なので、きちんと伝えることはもちろんですが、自分でも頭の中に知識として入れておくべきでしょう。
なお、ベンゾジアゼピン系睡眠薬のうち、注意すべき医薬品は
ハルシオン、レンドルミン、サイレース、ロヒプノール、ユーロジン
などとなります。
マイスリー、アモバン、ルネスタ
↑これらの睡眠薬は「非ベンゾジアゼピン系睡眠薬」となるので、添付文書上は注意薬から外れていますが、CYP3A4で代謝されるという点は変わらないので、念のため注意しておいたほうがいいでしょう。
クラリスロマイシンは服用後8時間程度で血中濃度が半分になります。なので、ED治療薬や睡眠薬などの併用注意薬を服用するときは、クラリスロマイシンを服用してから8時間程度空けて服用するようにするとよいでしょう。
この医薬品はクラリスロマイシンと併用してもOK?
クラリスロマイシンは併用禁忌・注意薬がたくさんあるので、「どの医薬品と併用注意なのかわからない」と言う人もいるはず。ここでは、利用する頻度の高い医薬品をピックアップして、クラリスロマイシンとの服用はOKかどうかを見ていきます。
ロキソニン(ロブ)、アセトアミノフェン(カロナール)などの解熱鎮痛剤
最も併用しやすい医薬品の一つが解熱・鎮痛剤でしょう。ロキソニンなども解熱鎮痛剤に当たりますが、「国民薬」と呼ばれるほど利用者が多いため、タイミング次第でクラリスロマイシンと併用する機会も多いはずです。
まず予備知識として、よく利用される解熱鎮痛剤は大まかに分けると2種類あります。
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬) | ステロイドではない抗炎症薬のこと。患部にたまる痛み成分「プロスタグランジン」を阻害する(減らす)。アスピリン(バファリン)、ロキソニン、ボルタレン、イブプロフェン(イブ)、セレコックス、インドメタシンなど種類は多い。 |
---|---|
アセトアミノフェン(カロナール) | 脳に作用して痛みを減らす。 |
NSAIDsの中でもロキソニンやイブプロフェンは市販薬が多く利用されているほか、アセトアミノフェンもルルやノーシンホワイトジュニアなど子ども~大人用の風邪薬などに多く含まれています。
これらの解熱・鎮痛剤はいずれもクラリスロマイシンの併用注意にはなっていません。実際、発熱をともなう風邪の治療時に、クラリスロマイシンと一緒に処方されることもよくあるので、併用するのはとくに問題ありません。
アスベリン、メジコンなどの各種風邪薬
風邪の治療をする際、さまざまな対症療法用の治療薬が処方されます。
治療薬 | 用途 |
---|---|
アスベリン | 咳止め |
デキストロメトルファン(メジコン) | 咳止め |
アンブロキソール(ムコソルバン) | 去痰薬 |
カルボシステイン(ムコダイン) | 去痰薬 |
エンピナース | 喉などの腫れを取る |
これらの医薬品は、咳が出るとか痰がでるといった風邪の症状によく処方される医薬品です。もし細菌性の性錠だった場合はクラリスロマイシンも併せて処方されることもあるので、併用注意というわけではありません。
ただ、咳が出るのがすべて細菌性というわけではないので、例えば咳止めが処方されたからといって、自己判断でクラリスロマイシンを追加するのはやめたほうがいいでしょう。医師の診察を受けて細菌性という判断が出たうえで併用となる点は忘れないでください。
フェキソフェナジン(アレグラ)やロラタジンなどの抗アレルギー薬
花粉症などのアレルギー性症状は、アレルギー性物質が原因とされています。
- ヒスタミン
- ロイトコリエン
主なアレルギー性物質は↑のとおりですが、これらの物質を阻害することができれば、症状も抑えることが可能です。
ヒスタミンやロイトコリエンを阻害する医薬品としては、
フェキソフェナジン(アレグラ)、レボセチリジン(ザイザル)、クラリチン(ロラタジン)、オロパタジン(アレロック)、プランルカスト(オノン)
↑が代表例となります。
また、アレグラなどの医薬品は風邪の症状を抑えることもあるため、細菌性の風邪を引いたときにクラリスロマイシンと同時処方されることもあります。
添付文書上もクラリスロマイシンの併用注意には指定されていないので、併用は基本的には問題ないでしょう。
エチゾラム(デパス)やワイパックス、ベルソムラなどの向精神薬・睡眠薬
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は「CYP3A4」で代謝されるため、CYP3A4を阻害する(減らす)作用のあるクラリスロマイシンとは併用注意であることは解説した通りです。
エチゾラム(デパス)、ブロマゼパム(レキソタン)、アルプラゾラム(ソラナックス)、ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)、ロラゼパム(ワイパックス)など
そして、CYP3A4で代謝されるものとしては、実は↑のような向精神薬・抗不安薬もたくさん該当します。
併用注意に指定されているわけではないので、うっかり併用しても大きな問題が起きることは少ないです。しかし、これらの医薬品も睡眠薬の場合と同じく、クラリスロマイシンを服用してから5時間以上空けて服用したほうが無難でしょう。